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教育行政・学校経営の最新情報「教職研修資料」【発行】教育開発研究所

教職研修資料2019/1/7 No.586発行  ※無断転載・加工禁止  【発行】教育開発研究所

教育行政のポイント

“働き方改革”の3つのポイント
 菱村 幸彦

 

昨年12月6日、中教審の働き方改革特別部会は、「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(素案)」を公表した。平成29年6月の諮問以来、審議を進めてきた中教審の答申素案(以下、答申案)である。

答申案は、A4判で70ページを超える大部なものなので、ここでその全容を解説する紙幅はないが、以下に重要な3つのポイントを取り上げる。

 

●勤務時間の上限ガイドライン

第1は、勤務時間管理の徹底である。教師の勤務時間管理は、労働基準法および労働安全衛生法で、校長や教育委員会の責務として定められている。答申案は、服務監督権者である教育委員会等が、ICTの活用やタイムカードなどにより勤務時間を客観的に把握し、集計するシステムを直ちに構築すべきと提言している

平成29年12月に公表された中教審の「中間まとめ」は、勤務時間の上限の目安を含むガイドラインの策定を提言しており、これを受けて文部科学省は、答申案の公表と同時に「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン(案)」を公表した。

ガイドライン案は、勤務時間の上限の目安として、条例で定める勤務時間から月45時間、年360時間を越えないこと、特別の事情の場合も、年720時間を超えないことなどを示している。

答申案は、ガイドラインの実効性を高めるため、ガイドラインの策定の根拠について法令上に規定することも提言している。

 

●給特法の枠組みを維持

第2は、給特法の維持である。審議の過程では、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)に基づく教職調整額制度が、教師の勤務時間管理をあいまいにし、長時間勤務を招く要因となっているなどの指摘があり、給特法を廃止して、時間外手当の支給を行うべきとの意見も強かったが、答申案は、給特法の基本的枠組みを維持する方針を示している。

給特法が定める教職調整額制度は、教員勤務の特殊性(創意と自発性)を確保するため、勤務時間の内外を問わず一括して評価する方式として、昭和46年に関係者が苦心して創り出した制度である。その枠組みの維持に賛成である。

ただ、答申案は、教職調整額の増額等を「中長期的な課題」としているが、勤務時間縮減に取り組んだうえで、どうしても超過する部分については、早急に手直しすべきであろう。

 

●1年単位の変形労働時間制の導入

第3は、1年単位の変形労働時間制の導入である。労働基準法は、事業形態にあわせた労働時間を設定できるよう、1年単位の変形労働時間制について規定しているが(第32条の4)、地方公務員は適用除外となっている。

答申案は、学期中と長期休業期間で勤務に繁閑の差があることから、自治体の判断で1年単位の変形労働時間制を適用できるように「法制度上措置すべき」と提言している。

審議の過程では、1年単位の変形労働時間制の導入が教師のオーバーワークの解消の切り札のように捉える見方もあったが、変形労働時間制の導入で簡単に勤務時間が縮減できるわけではない

この点について、答申案は、1年単位の変形労働時間制を導入することにより、学期中の勤務が現在より長時間化することを懸念し、「教師の健康に深刻な影響を及ぼすようなことがあっては本末転倒である」と釘を刺している。

 

(ひしむら・ゆきひこ=国立教育政策研究所名誉所員)

 

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