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藤田のぼるの「童話作家のアイウエオ」【タ】高楼方子さん
『十一月の扉』 福音館書店刊 高楼方子/作 千葉史子/装画
 

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。

『十一月の扉』 福音館書店刊 高楼方子/作 千葉史子/装画

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 今回紹介する「高楼方子」さん。このお名前をちゃんと読めたら、児童文学についてちょっと詳しい方といえるでしょう。正解は「たかどの・ほうこ」。幼年向けの本は作者名をひらがなで表記している場合が多いようで、「へんてこもり」や「つんつくせんせい」シリーズなど、小さいお子さんと一緒に読んだらとても楽しめると思います。作家としてのスタートは『ココの詩』というかなり分厚いファンタジーで、ひょっとすると日本の児童文学作家でデビュー作の長さナンバー1かもしれません。これに続く長編ファンタジーがあと2作あり、『時計坂の家』と『十一月の扉』です。『時計坂の家』は高楼さんの故郷である函館が舞台ですが、僕はこれを読んだ時に、子ども時代に相当豊かな読書体験を持った作家だなあ、と思いました。それ以前の書き手は、世代的に子どもの頃優れたファンタジーを読むということは難しく、どこかぎこちなさが残るのですが、高楼さんの場合は、「根っこからファンタジー」という感じがするのでした。そして『十一月の扉』は、「ファンタジーというのはこういうもの」という思い込みを壊してくれる、とてもユニークな作品です。
 そうした幅広い作風の高楼さんですが、お勧めしたいのは「おばあさんもの」です。例えば『いたずらおばあさん』に登場するのは、洋服研究家のエラババ先生84歳と、弟子のヒョルコさん68歳。自宅を訪ねたヒョルコさんに、先生は画期的な服を発明したと打ち明けます。着れば一歳若返るという服で、うんと薄いので何枚でも重ねられます。10枚か20枚も着られると思ったヒョルコさんでしたが、先生はなんと8歳の子どもになろうといいます。中味はおばあさんのままですから、迷惑な大人たちをやりこめたり、大冒険も思いのまま。こういう痛快ないたずら話があったかと思うと、『おーばあちゃんはきらきら』では、チイちゃんのひいおばあちゃんの語るちょっと不思議な思い出話がしっとりと語られ、読者を日常の少し向う側の世界に誘います。
 実は、中学2年生の少女が、家族が引っ越した2学期の残りの二ヵ月を、たまたま見つけた十一月荘という下宿屋で過ごすという『十一月の扉』にも、すてきなおばあさんが登場するのでした。ここの大家の元英語教師の閑(のどか)さんで、ここには他に建築士の女性と小学校1年生の女の子とその母親が住んでいます。その〝共同体〟のありようが誠に魅力的なのですが、おそらくこういう場所に参加するには何かの「切符」が必要で、高楼さんの作品のファンは、そうした切符を求めている人たちなのかも知れない、と思ったりしています。

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会副理事長。 聖学院大学他講師。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』 (共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文 溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞) などがある。小学校国語教科書編集委員、NHK学校放送企画委員なども務める。