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藤田のぼるの「童話作家のアイウエオ」【モ】もりやまみやこ
『きいろいはげつ』あかね書房刊 もりやまみやこ/作 つちだよしはる/絵
 

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会 理事長。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』(共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞)などがある。小学校国語教科書編集委員なども務める。

『きいろいはげつ』あかね書房刊 もりやまみやこ/作 つちだよしはる/絵

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 児童文学の作家にも、それぞれ〈専門〉というか、得意なジャンル、グレイド(対象年齢)があります。森山 京さんは作品のほとんどが幼年童話という書き手で、森山さんの作品こそ、幼年童話を書こうとする人が模範とすべき作品だと思います。
 動物たちが人間のようにふるまう「擬人化」という手法の作品が多いのですが、代表作は『きいろいばけつ』でしょう。橋のたもとに置き忘れられた黄色いばけつを見つけたきつねの子。いったい、誰のでしょう。うさぎの子とくまの子を呼んできますが、二人にも見覚えはありません。「きつねくんのにしたら」と言われ、誰もずっと取りに来なかったらそうしようと決めますが、「ずっとって、どれくらいかな」ということになり、一週間待ってみることにします。次の日からきつねの子は毎日橋のたもとに出かけます。そしていよいよ七日目。朝早く来てみると、ばけつはなくなっていました。持ち主が取りに来たのか、誰かが持って行ってしまったのか……。残念がるうさぎの子やくまの子に、「いいんだよ、もう」と笑うきつねの子。
 このきつねの子の思いを、小さな読者がどんなふうに受け止めるか。「文学」というのは、説明できない、しにくい心情との出会いといってもいいように思いますが、これこそ文学の初めという気がします。このきつねの子たちの話は五冊のシリーズになっています。
 そんなふうに動物たちのお話が多い森山さんですが、人間の一年生をめぐるシリーズもあります。『あきらくん かおりちゃん』『さちこちゃん たくやくん』『なおとくん はるかちゃん』『まりこちゃん やすきくん』『らいたくん わかばちゃん』の五冊ですが、名前の頭文字が「アカサタナ……」になっていて、二人の話で一冊になっています。例えば「たくやくん」は、お父さんとお風呂に入った時その日の授業参観のことをお父さんに教えてあげています。急に雨が降ってきて、友だちのようへいが思わず「あっ、雨」と大きな声を出してしまったというのです。「先生、困ったろうなあ」というお父さんに、「全然困らなかったよ」とたくや。先生は「すごい雨ね。ちょっと見物しましょう」と言ってみんなで外を見て、その後は誰もおしゃべりもしないで勉強したというのです。「その話(参観に行けなかった)お母さんにも聞かせてあげるといいね」というお父さん。
 僕は書評で「二人の一年生」シリーズと紹介したのですが、森山さんはその名づけをとても喜んでくださいました。実は森山さんは元々はコピーライターで、あの伝説的な「二十五歳はお肌の曲がり角」というのは、森山さんのコピーなのです。そんな森山さんから名づけをほめてもらって、かなりうれしかったことを覚えています。

◇藤田のぼる(ふじた のぼる)-profile-
1950年秋田県生まれ。児童文学評論家・作家。日本児童文学者協会 理事長。著書に『児童文学への3つの質問』(てらいんく)、『少年少女の 名作案内 日本の文学』(共編、自由国民社)『「場所」から読み解く世界児童文学事典』(共編著、原書房)など、創作作品に『山本先生新聞です』(岩崎書店)、『錨を上げて』(文溪堂)『みんなの家出』(福音館書店、2014年度産経児童出版文化賞フジテレビ賞)などがある。小学校国語教科書編集委員なども務める。